結論
ハイブリッドインバーターは、バッテリーがなければ太陽光発電をうまく活用できない設計であることが多い(バッテリーを外すと系統電力頼みになる)
セルバランスのばらつきは20〜50mVまでなら通常許容範囲、100mV以上は要対応
復旧は「①個別充電でセル均等化・満充電 → ②3台の電圧近似確認 → ③バスバー並列接続」の順序を守ることが重要
満充電後の休止は数時間で十分、数日単位の放置はむしろ逆効果
災害時の電源確保は「機器を揃えれば終わり」ではなく、こうした日々の点検とメンテナンスの積み重ねが実際の稼働率を左右します
以下、実際に起きたトラブルと対応の経緯を記録します
きっかけは「太陽光発電量が少ない」という違和感
能登以外の2拠点目の自宅にも、ハイブリッドインバーター(LVYUAN SPI-8K-U)に、LiFePO4バッテリー(51.2V・100Ah)を3台バスバー並列接続したシステムを組んでいます。ある日、3台のうち1台に異常を発見しました。運転ランプが点かず、自動遮断が発生していたのです
原因を調べると、16セルのうち1セルだけ電圧が約560mV低下していました。これがきっかけで、残る2台も含めて全バッテリーのセルバランスを点検することにしました
バッテリーを外したら、太陽光発電しなくなる
セルバランス調整のため、3台すべてをブレーカーで切り離しました。ここで想定外の事態が起きます
「バッテリーがなくても、日中の使用電力分くらいは太陽光パネルが発電してくれるだろう」――そう考えがちですが、実際には太陽光発電がほぼゼロになり、系統電力(電力会社からの電気)だけで家中をまかなう状態になります
理由は、ハイブリッドインバーターの構造にあります
多くのハイブリッド機は、太陽光の充電回路(MPPT)が「バッテリー電圧」を基準にDCバスを制御する設計になっています
バッテリーが物理的に外れると、この電圧基準そのものが失われ、太陽光発電の制御ができなくなり、安全のため系統電力への「バイパスモード」に自動的に切り替わってしまうのです
教訓:ハイブリッドインバーターは、バッテリーがあって初めて太陽光発電を活かせる設計になっている機種が多い
単純に「パネル+インバーターがあれば太陽光が使える」わけではありません
セルバランスのばらつき、実際どのくらいなら問題?
3台のバッテリーを個別に点検した結果、状態はそれぞれ異なりました
バッテリー1:一晩の個別充電でセルバランスが完全に整った
バッテリー2:1セルだけ300〜400mVの電圧差が残っていた
バッテリー3:1セルだけ30mVの電圧差が残っていた
ここで気になるのが、「どのくらいの電圧差なら許容範囲なのか」という点です。LiFePO4のセルバランスの目安として、
20mV以下:良好
20〜50mV:許容範囲
50〜100mV:経過観察が必要
100mV以上:ばらつき大、要対応
という基準があります。これに照らすと、バッテリー3の30mVは正常範囲内、バッテリー2の300〜400mVは明らかに異常域と判断できます
個別充電という地道な対応
対応方法はシンプルで、異常のあるバッテリーを1台ずつ専用充電器にかけ、満充電付近まで持っていく
多くのBMS(バッテリー管理システム)は、高いSOC(充電率)域でのみパッシブバランス回路が作動するため、この方法でセル間の電圧差を徐々に縮めていくことができます
ただし、注意点もあります
バランスが取れたら早めに満充電状態から切り離すこと
高電圧域に長時間留まると、セルへの負荷(劣化)が進みやすくなるためです
復旧の手順
最終的に決めた手順は、次の3ステップです
各バッテリー内のセルを均等化し、満充電にする
3台それぞれの端子電圧を確認し、近似値(目安0.1〜0.2V以内)であることを確かめる
バスバーで並列接続し、運用を再開する
パック間の電圧差が大きいまま接続すると、瞬間的に大きな均等化電流(突入電流)が流れ、BMSの保護回路作動や端子の発熱リスクがあります。急がば回れ、です
なお、満充電後に「数日寝かせる」必要はありません
満充電直後は分極(充電時の一時的な電圧上昇)の影響があるため、2〜6時間程度の休止で電圧は十分安定します
逆に数日単位で放置すると、バッテリーごとの自己放電率の差が新たに表れ、せっかく揃えた電圧が再びずれる原因になります
今回の記録が、同じようにオフグリッドシステムを運用している方の参考になれば幸いです
